昨夕・本日と神葬祭のご奉仕がありました。
故人は93歳と並々ならぬところに齢は達していましたが、家族や回りの人にとっては日一日でも、一年でも存(ながら)えて欲しいというのが当然の願いです。
祭詞(さいし)に「七日七夜(なぬかななよ)の魂呼(たまよ)ばい」という表現を用いましたが、〝 魂呼ばい 〟とは末期(まつご)を迎えた人に対して、肉体から遊離した魂を呼び戻そうとする習俗です。
枕元で名前を呼んだり、屋根の上や井戸の中に向かって大声で魂(たましい)を呼び戻すなどが広く知られています。
通夜祭(つやさい)では、「霊魂(みたま)の再び帰り来まさんことを祈(ね)ぎまつりつつ」と祈りますが、遊離しようとする霊魂の招魂(しょうこん)と、蘇生(そせい)を願う儀式といえます。
蘇(よみがえ)りが叶(かな)わず、臨終(りんじゅう)を確認すると、亡骸(なきがら)である遺体から御霊(みたま)を遷(うつ)し留(とど)める儀式が遷霊祭(せんれいさい)です。
浄闇(じょうあん)の中、微音(びおん)で遷霊詞(せんれいし)を唱え、「オーオーオー」という警蹕(けいひつ)を三度唱えて、霊璽(れいじ)に永遠の守護神となる御霊を招魂します。
最後の別れを告げる葬場祭(そうじょうさい)では、祭詞作文に無念さや悲しみなどを表現しながら、来歴を振り返りつつ、故人を偲びます。
死はとても辛く、悲しいものですが、前世も現世も未来も自分を生んでくれた祖神から離れるものではありません。
生まれこぬさきも生れて住める世も死にても神のふところのうち 橘三喜
命は一つ限りながら、不連続の連続で、いただいた命は連綿と子々孫々につながっていくのです。
誄歌(しのびうた)は故人を追慕(ついぼ)する歌で、雅楽の演奏で奉奏(ほうそう)されますが、時には伴奏なしで斉唱することもあります。
しづかなる境(さかい)に行きてしづまらむ暫しをここに魂(たま)より来たる