八月節白露(はくろ)の次候で「鶺鴒鳴」(せきれいなく)となりました。
和歌に詠(よ)まれる古今伝授(こきんでんじゅ)の3種の鳥を「三鳥」(さんちょう)、すなわち百千鳥(ももちどり)・喚子鳥(よぶこどり:呼子鳥)・稲負鳥(いなおおせどり)というそうですが、百千鳥は鶯(うぐいす=春)、喚子鳥は郭公(かっこう=夏)・杜鵑(ほととぎす:時鳥・不如帰・子規など)、そして稲負鳥は鶺鴒(=秋)とされるようです。
『日本書紀』の一書(いっしょ)には、男神の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と女神の伊弉冉尊(いざなみのみこと)の国生みにあたり、鶺鴒(にわくなぶり=せきれいの古名)が尾を上下に振って、両神に共為夫婦(みとのまぐあい:美斗能麻具波比・溝合為夫婦・合為夫婦=婚姻・交合)を教えたと記されています。
石叩(いしたた)き、庭叩(にわたた)き、妹背鳥(いもせどり)、嫁鳥(とつぎどり)、嫁教鳥(とつぎおしえどり)、恋教鳥(こいおしえどり)、恋知鳥(こいしりどり)、道教鳥(みちおしえどり)といった異称をもつ理由が理解できます。
近隣の田んぼでは稲穂がその重みに頭を垂れて、刈り取りの時期を迎えていますが、稲の穂がふくれることを穂孕(ほばら)みというそうで、交道(とつぎのみち)を二神に教えた鶺鴒は、稲の成熟・実りをも連想させてくれます。