2012年5月23日 のアーカイブ

棟梁は家長の御心の林なり

2012年5月23日 水曜日

本日は汗ばむほどの夏日となりました。

2月に地鎮祭に伺ったビル新築工事で、主要構造が出来上がり、上棟祭(むねあげのまつり・じょうとうさい)のご奉仕をいたしました。

上棟祭では、土地の産土神(うぶすなのかみ)及び建物の神さまである屋船久久遅命(やふねくくのちのみこと)・屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと)、匠(たくみ)の神さまである手置帆負命(たおきほおいのみこと)・彦狭知命(ひこさしりのみこと)を併せてまつります。

本来は屋上と屋下に祭場を設け、幣串(へいぐし)・弓矢などを飾り、棟木(むなぎ)を棟に曳き上げる「曳綱(ひきつな)の儀」、棟木を棟に打ち固める「槌打(つちうち)の儀」、餅や銭を撒(ま)いて災禍(さいか)を除く「散餅銭(さんぺいせん)の儀」という三儀を以てその眼目(がんもく)とします。

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本日は建物の構造や工事の都合もあり、仮に見たてた棟木に晒(さらし)を巻いた綱を垂らし、匠長(工事部長)、設計士、建主の三者に「エイ・エイ・エーイ」と三度綱を曳いていただきました。

『日本書紀』の顕宗(けんそう)天皇紀には、棟上げの初見(しょけん)とされる室寿(むろほぎ)の歌が記されています。

「・・・築(つき)立つる柱は、此(こ)の家長(いえぎみ)の御心(みこころ)の鎭(しずまり)なり。取挙ぐる棟(むね)梁(うつばり)は、此の家長の御心の林なり。・・・」

今と昔では用材・道具・構造・工法・工期など様々な違いがありますが、建主さんの思いや願いは何の変わりもないと思います。

「永遠に、永久に」との思いのこもった言霊(ことだま)(「エイ・エイ・エーイ」)を聞きながら、曳綱の儀を見つめました。